このサイトでは乳がん(乳ガン・乳癌)のセルフチェック(自己検査)や乳がん検診、画像診断(マンモグラフィ・超音波・X線・CT・MRI)、症状、治療、クラス、ステージ別手術について
情報提供しています。

乳がんの治療には、手術(外科療法)、放射線療法、薬物療法があります。外科療法と放射線療法は治療を行った部分にだけ効果が期待できる「局所療法」であり、薬物療法は「全身療法」として位置づけられます。
乳ガン治療の基本は「手術(外科療法)」で、ステージⅠ期~Ⅲ期の乳がんの場合は必ず手術に必要になります。遠隔転移(Ⅳ期)の場合も、手術が行われることがあります。
手術では、乳房にできた「がん」「がん組織を含めた周りの正常組織」を同時に切除します。

現在、世界的に乳がんの手術において「切開部位の縮小化」傾向にあり、1980年代からは乳房温存術が開始され、1990年代に急速に広がりました。日本は欧米より10年近く遅れているとされていますが、確実に縮小化は進んでおり、1980年代には乳癌手術全体の50%以上を占めていた乳房と胸筋を切除する「胸筋合併乳房切除術(ハルステッド法)」は、現在ではほとんど行われていません。2000年以降は「乳房温存術」が乳がん手術全体の40%以上を占めるまでになりました。


乳がんの手術方法は、「乳房」「胸筋」「リンパ節」それぞれを「どの程度切除するか?」「温存(残す)するのか?」で異なってきます。手術方法や切除する範囲は、乳房内でのがんの広がりによって決められます。
通常、乳がんの切除と同時に、わきの下のリンパ節を含むわきの下の脂肪組織も切除します。これを「腋窩(えきか)リンパ節郭清(かくせい)」と呼びます。

| 乳房 切除術 |
乳房 温存手術 |
胸筋合併乳房切除術 (ハルステッド法) |
拡大乳房 切除術 |
|
|---|---|---|---|---|
| 乳房全部 | ● | ● | ● | |
| 乳房の一部 | ● | |||
| わきリンパ節 | ● | ● | ● | ● |
| 小胸筋 | ▲ | ● | ● | |
| 大胸筋 | ● | ● | ||
| 胸骨傍リンパ節 | ● | |||
| 鎖骨上リンパ節 | ▲ |
●=切除が必要 ▲=温存する場合もあり

| 乳房のしこりを切除する手術 | |
|---|---|
| (1)腫瘍核出術 | 乳房のしこりだけを切除する手術です。吸引細胞診や針生検で術前にがんの診断がつかないときに行われることが多く、癌の手術としては一般的ではありません。 |
| (2)乳房温存手術 (乳房部分切除術) |
しこりを含めた乳房の一部分を切除する方法で、「乳房温存手術」と呼ばれます。病変の部位や広がりによって、乳頭を中心にした扇形に切除、あるいはガンの周囲に2cm程度の安全域をとって円形に切除します。しこりが大きい場合、乳がんが乳腺内で広がっているとき、乳腺内にしこりが複数ある場合には、原則として温存手術の適応にはなりません。通常手術後に放射線照射を行い、残された乳房の中での再発を防ぎます。![]() |
| (3)単純乳房 切除術 |
がんのできた側の乳房を全部切除し、わきの下のリンパ節の切除は行わない場合をいいます。 |
| (4)胸筋温存乳房 切除術 |
乳房とわきの下のリンパ節を切除します。場合によっては、胸の筋肉の一部分を切り離すこともあります。この術式が最も一般的な乳がんの手術方法です。![]() |
| (5)胸筋合併乳房 切除術 (ハルステッド法) |
乳房とわきの下のリンパ節だけでなく、乳腺の下にある大胸筋や小胸筋を切除します。かつてはこの手術方法が標準的手術方法として実施されてきましたが、現在ではがんが胸の筋肉に達している場合だけ行われます。![]() |
| わきの下のリンパ節に対する手術 | |
|---|---|
| (1)腋窩リンパ節郭清 | 通常、乳がんの切除と同時に、わきの下のリンパ節を含むわきの下の脂肪組織も切除します。これを「腋窩リンパ節郭清」と呼びます。 腋窩リンパ節郭清は、乳がんの領域でのリンパ節再発を予防するだけでなく、再発の可能性を予測し、術後に薬物療法が必要かどうかを検討する意味で非常に重要です。 腋窩リンパ節郭清を行うと、手術をした側の腕にリンパ浮腫(むくみ)が出たり(報告によって異なりますが、頻度は10~20%程度)、肩の痛みや運動障害が起きることがあります。 |
| (2)センチネルリンパ節生検 | センチネルリンパ節とは日本語で「見張り番リンパ節」という意味であり、乳がんからこぼれ落ちたがん細胞が最初に到達する乳腺の領域リンパ節のことを指します。 がんの近傍に放射線同位元素や色素を注射することにより見つけます。多くの場合は、わきの下のリンパ節がセンチネルリンパ節になりますが、センチネルリンパ節に転移がないとき、多くの場合、わきの下のリンパ節に転移がないということがわかっています。 センチネルリンパ節生検は腋窩リンパ節郭清を行わなくてもよい可能性がある患者さんを選ぶ手段として期待されていますが、現在ではまだ研究段階の治療です。 |
| 乳房再建術 |
|---|
| がんを切除する手術で失われた乳房を自分の筋肉、または人工物を使用し形成する手術です。乳頭を形成することもできます。再建術を希望する方は担当医とよく相談してください。 |
放射線にはがん細胞を死滅させる効果があります。放射線治療は放射線照射を行った部分にだけ効果を発揮する局所療法です。乳がんでは外科手術でがんを切除した後に乳房やその領域の再発を予防する目的で行う場合(これを「術後放射線療法」といいます)と、骨の痛みなど転移した病巣による症状を緩和するために行う場合があります。
放射線を照射する範囲や量は放射線治療を行う目的、病巣のある場所、病変の広さなどによって選択されます。副作用は病巣周囲の正常組織にも放射線がかかることによって起こり、放射線があたった領域に含まれる臓器に特有の副作用が出現します。例えば、腰椎に放射線をあてた場合は皮膚や消化管の炎症などが予想されます。
乳がんの治療に用いられる薬は、ホルモン療法、化学療法、新しい分子標的療法の3種類に大別されます。薬物療法には薬によって重篤度は異なりますが、多かれ少なかれ副作用が予想されます。また副作用は治療を受ける人それぞれで出方に違いがあり、個人差があります。薬物療法を受ける場合には、薬物療法の目的、期待される治療効果、予想される副作用とその対策などについて十分な説明を受け、理解することが大切です。
| ホルモン補充療法 | |
|---|---|
| 治療効果 | 約7割の乳がんはホルモン受容体を持っており、ホルモン受容体を有する乳がんは女性ホルモン(エストロゲン)の刺激ががんの増殖に影響しているとされます。 手術でとった乳がん組織中のホルモン受容体(エストロゲン受容体とプロゲステロン受容体)を検査することにより、女性ホルモンに影響されやすい乳がんか、そうでない乳がんかがある程度わかります。女性ホルモンに影響されやすい乳がんを「ホルモン感受性乳がん」、「ホルモン依存性乳がん」と呼び、ホルモン療法による治療効果が期待されます。 |
| 治療内容 | 生理があって卵巣機能が活発な女性では卵巣が女性ホルモンの主な供給源になります。 また、女性は通常50歳前後を境に卵巣の働きが衰えることにより、生理が止まり「閉経」を迎えます。閉経後の女性では卵巣からの女性ホルモンの分泌は停止し、副腎皮質から分泌される男性ホルモンが原料となって、「アロマターゼ」と呼ばれる酵素の働きによって女性ホルモンがわずかに産生されます。閉経後の女性では女性ホルモンのレベルは閉経前に比べ1/100程度に減少します。 ホルモン療法には抗エストロゲン剤、選択的アロマターゼ阻害剤、黄体ホルモン分泌刺激ホルモン抑制剤などがあります。乳がんの術後や転移性乳がんに用いられる「タモキシフェン」は代表的な抗エストロゲン剤であり、女性ホルモンのエストロゲン受容体への結合を阻害します。選択的アロマターゼ阻害剤の作用機序は、アロマターゼの働きを抑え、閉経後の女性において女性ホルモンの産生を抑えます。閉経前の場合では、卵巣からの女性ホルモンの分泌を抑える黄体ホルモン分泌刺激ホルモン抑制剤を使用します。その他、プロゲステロン製剤などがありますが、作用機序はよくわかっていません。 |
| 副作用 | ホルモン療法の副作用は、化学療法に比べて一般的に極めて軽いのが特徴ですが、タモキシフェンの長期間使用者では子宮がんや血栓症のリスクが、選択的アロマターゼ阻害剤の場合には骨粗鬆症のリスクが高まります。 |
| 化学療法(抗がん剤) | |
|---|---|
| 治療効果 | 細胞分裂のいろいろな段階に働きかけてがん細胞を死滅させる効果があり、乳がんは比較的化学療法に反応しやすいがんとされています。 |
| 治療内容 | がんに対して用いられる化学療法には注射薬や内服薬があります。使用する薬剤やその投与法によって副作用の特性やその頻度などは異なりますので、事前にそれらをよく理解し心構えをつくっておくことが大切です。 |
| 副作用 | 化学療法はがん細胞を死滅させる一方で、がん細胞以外の骨髄細胞、消化管の粘膜細胞、毛根細胞などの正常の細胞にも作用し、白血球、血小板の減少、吐き気や食欲低下、脱毛などの副作用が現れます。 |
| 新しい分子標的療法 ― ハーセプチン ― | |
|---|---|
| 治療効果 | ハーセプチン治療はHER2タンパク、あるいはHER2遺伝子を過剰に持っている乳がんにのみ効果が期待されます。 |
| 治療内容 | 乳がんのうち20~30%は、乳がん細胞の表面にHER2タンパクと呼ばれるタンパク質をたくさん持っており、このHER2タンパクは乳がんの増殖に関与していると考えられています。最近このHER2をねらい撃ちした治療法(分子標的療法)が開発され、乳がん治療を大きく変えました。 |
遠隔転移のない手術が可能な乳がんの場合、全身にこぼれ落ちている可能性のある微小転移に対して全身治療、すなわち「薬による治療」を行うことによって、再発を予防することができます。
このような薬の治療を「術後薬物療法」と呼びます。最近では薬の治療を手術に先行して行う場合もあり、これを「術前薬物療法」と呼びます。薬の治療は再発のリスクの大きさや年齢によって選択されます。
乳がんの再発リスクを予測する尺度にはしこりの大きさや、わきの下のリンパ節(腋窩リンパ節)への転移の個数、ホルモン受容体の有無などがあります。再発のリスクがある場合にはリスクや年齢に応じて放射線などの局所療法に加え、全身治療として薬物療法を行うことが推奨されます。
| 術後薬物療法 | ・乳がん手術後の再発を防止する全身治療 ・身にこぼれ落ちている可能性のある微小転移にアプローチする再発防止 |
|---|---|
| 術前薬物療法 | ・手術の前に行う、薬による治療 ・再発のリスクの大きさや年齢によって選択される |
出典:国立がんセンター